矢野経済研究所 ICT・金融ユニット

2019.11.06

【アナリストオピニオン】ドローン活用のフィールドは水中へ②

AUVの商用利用は限定的で、海洋地質学、海洋生物学、海洋物理学などの研究分野での利用が主であった。近年、センシングと解析に関わるテクノロジーが発達するにつれ、その適用範囲が広がりつつある。その一例が、自律航行でパイプラインを点検するものである。

AUVは、ケーブルでつながれていないためROVよりも自由度が高く、何よりも船舶につながれたROVのように調査地点の海上に船を出航させなくてよい。しかし、高いレベルの自律性(autonomy)が求められ、バッテリー容量に制限があり、通信が低速であるなどの制約から、その適用範囲は海洋地質学や防衛用途に限定されてきたこともあって、現行のAUVはそれぞれの用途に最適なものがオーダーメイドで開発されてきたため、汎用性に乏しいという側面もある。

他方、最近露出が高まっている水中ドローンは、下記のようなROVの中でも低価格のもので、コンスーマー向けも含まれている。ケーブルでつながれたROVが現在の主流と言える方式となっており、用途としては水深100m未満の海底の探査、海底ケーブルの点検、橋などの建造物の水没部分の点検、船舶の船底(水中部分)の検査、養殖水産物の観察などがある。

そんな中で、RoboseaのBIKIは完全無線で、障害物検知に加え、水中コントロール用の音波リモコンがついているコンスーマー向けである。水面に浮上すればGPSで元の位置に戻る帰還機能もある。Notio plusのiBubble、Deep TrekkerのDTG3, Blueye RoboticsのPioneerなどは今年(2019年)出荷開始予定である。
水中ドローンも中国企業のものが多く、特に低価格パーソナルユース(ホビー用)ではこのほかにも多くの企業が参入している。
卵型(フットボール型)からプロペラを展開するドローン「パワー・エッグ(PowerEgg)」が有名なパワー・ビジョン社(PowerVision)は、パワー・レイ(Power Ray)を2017年に50,000台販売している。また、深く潜水しない水面ドローンとしてパワー・ドルフィン(Power Dolphin)も展開している。

ソーファー・オーシャン・テクノロジー(Sofar Ocean Technologies)は、かつてOpenROVとして水中ドローンを開発していた企業と海洋環境モニタリングブイ開発のスプーンドリフト(Spoondrift)とが一緒になった企業で初期の資金調達シリーズAで700万ドル(7.7億円)を集めた。OpenROVは既に7年前に設立されておりこの分野では老舗である。

これらのROVは、日本円で50万円以下のものも多く、伝統的にパイプライン点検などに利用されてきた水深500mに耐える1,000万円クラスのROVに比べるとスペックも低い。しかし、低価格になったことで、コンスーマーユースへと利用拡大が期待できる。
また、これまでダイバーが潜っていたような分野での点検が容易になり、潜航時間の制限を気にしなくて良い。港湾や護岸など陸続きの部分であれば船を出す必要もない。
一般的に、通常のROVによる点検は、比較的大型の船にROVを乗せて現地に行き、それなりの人員も帯同する必要があることから、1日のコストは5,000USドル(55万円)程度とされる。この1日のコスト分で購入できることになる。

水中ドローンの商用利用としての市場全体を見渡すと、AUVやROVの活躍する場は、石油・ガス、電力等のエネルギー産業が需要全体の半分を占める。その主な用途は、海底資源の探索と海底パイプラインや海底送電線ケーブルの点検である。
これらのタスクをこなすために利用されるのが、オンボードカメラによる可視光カメラ、超音波のソナー/エコー、磁気センサ、レーザースキャナ等である。(古舘渉)

  • デジタルカメラ:対象物の視覚的な点検に加え、ROVであればパイロットがROVの位置や新工法ことその周辺環境を把握するために利用できる。
  • ソナー/エコー:可視光が届かない距離でも対象物や周辺の障害物等を検知できる。
  • 磁気センサ:パイプラインの接続部分などの内外部の腐食検知
  • レーザー:水中ではレーザーの到達距離が限定されるものの、LiDARなどを使用することで近距離であれば高精度の3Dイメージを生成できる。

※全文、関連資料の概要は以下よりご覧いただけます

https://www.yanoict.com/opinion/show/id/273

https://www.yano.co.jp/market_reports/C61111200

【図表:主な水中ドローンのメーカーと製品】
古舘 渉(フルダテ ワタル) 主任研究員
新規事業コンサルティング部門、上海現地法人、海外部門を歴任し、新規市場開拓のお手伝いには自信があります。

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