矢野経済研究所 ICT・金融ユニット

2019.11.07

【アナリストオピニオン】ドローン活用のフィールドは水中へ③

ちなみに、2010年に米国ミシシッピ川河口沖で大規模な原油流出事故が起こったディープウォーター・ホライズンでは、水深1,500mの海底から原油を採掘していた。
その石油メジャーの一角であるロイヤル・ダッチ・シェルが主催する海底の地形探査コンテストの優勝賞金は700万ドル(7.7億円)にも上る。

さらに、通信用の光ファイバー海底ケーブルは、主要な大陸間を結ぶ比較的長距離なネットワークだけでも75万㎞に及び(2018年末時点)、さらに2021年までに15万㎞が追加される予定である。
石油・ガス用の海底パイプラインは、3,000,000㎞、送電用の海底ケーブルは8,000㎞以上が存在する。

このように、水中ドローン(AUVとROV両方)の活躍の場は非常に広大と言える。そして、ROVによる点検・検査は既に成熟した市場ではある。しかし、ROV自体が低コスト化することでこれまで導入をためらわれた分野での適用や新たな分野開拓(レジャー用途での利用などを含む)が進もうとしている。

水中ドローンを商用利用する上で求められるのは、海中インフラや建築物のメンテナンスにおけるコスト削減とリスク低減である。これに必要なのは、ROVの操作やタスク実行の自動化(半自動化)、収集データの管理・解析のスマート化による意思決定の簡素化である。この点においては、ROVはまだ進化の途上にあると言える。

そして、水中ドローンの最大の難点は、通信手段が限定される点にある。電波は、水中では急速に減衰し、低い周波数の電波を使った通信であっても100m程度の距離が最大であるため、大気中を飛行するドローンのように操縦信号や機体の状態を把握するためのテレメトリーを電波でやり取りできない。
潜水艦の場合は、超長波電波(VLF: Very Low Frequency, 周波数3kHz~30kHz)を使うことで通信できるが、波長が長い電波には巨大なアンテナが必要になるため、小型の水中ドローンでは使えない。水中での通信手段は超音波が有効であるが、遅延や障害物への弱さなどの弱点がある。そこで、可視光やレーザーを利用した光通信によって通信する手段が研究されている。
そのため、表中の水中ドローンにはケーブルでつなぐことで通信を確保するROVが多い。電力を同時に供給することもできるが、ケーブルが太くなると海流の影響を受けやすく、ケーブルを引っ張るためのパワーも必要になるため、内蔵バッテリーとするものが多い。しかし、ケーブルでつなぐことの最大のデメリットは到達距離の短さである。当然ケーブルの長さ以上遠くに離れることはできないため、ケーブルの長さイコール到達可能距離となる。また、ケーブルが海底の岩礁などに引っかかったり、ケーブル自体が捻じれて絡まる可能性もある。その半面、ケーブルでつながることで、例えば潮に流されて行方不明になるというようなことはない。回収時にはケーブルを引っ張り上げるだけで良い。

石油大手BPのレポート「Energy Outlook 2019」によると、エネルギー消費量(石油、ガス、石炭、原子力、リニューアブルすべてを含む石油換算トンベース)は、2040年まで年率1.2%で増加すると見込まれている。再生可能エネルギーは急速に増加(同7.1%)するが、石油、ガスもそれぞれ順に0.3%、1.7%の増加である。
この供給元は、依然として中東が主軸ではあるが、米国、中国、ロシアに加えて、アフリカが今後伸びる見通しである。ROVの適用を考えると、海洋資源開発が活発な米国、中国に加えて、東南アジア、アフリカが有望市場と言える。海に囲まれた日本もまた有望市場であり、同様に1万以上の島があるインドネシアも人口規模からも有望と言える(古舘渉)。

※全文、関連資料の概要は以下よりご覧いただけます

https://www.yanoict.com/opinion/show/id/273

https://www.yano.co.jp/market_reports/C61111200

古舘 渉(フルダテ ワタル) 主任研究員
新規事業コンサルティング部門、上海現地法人、海外部門を歴任し、新規市場開拓のお手伝いには自信があります。

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