矢野経済研究所 ICT・金融ユニット

2020.03.24

【アナリストオピニオン】働き方改革最前線~ITベンダの先進事例4選~(前編)①

2019年4月から「働き方改革関連法」が順次施行され、時間外労働の制限や年次有給休暇の取得など、各企業が法規制への対応に追われた。2020年4月からは、時間外労働の制限が中小企業にも適用予定であり、社内制度の見直しや新たなツールの導入など、働き方改革の裾野は更に拡大していくだろう。
また、直近では新型コロナウイルス感染症の影響に伴い、大手企業を中心としてテレワークを実施するとの報道が相次いだ。世間では大きな注目を集めており、テレワークを中心として働き方改革の取り組みが加速する可能性も考えられる。

今回は、ITベンダ4社が実践する働き方改革の事例を「制度」と「設備」の2軸で紹介する。情報通信業のテレワーク利用率は、39.9%(2018年)と全業種の中で最も高く、また、前年比8.8%増と取り組み状況が進展している※1。その情報通信業の中でも先進的な取り組みを行う各社は働き方改革にどう取り組み、どのような成果を上げているのだろうか。前編では、日本マイクロソフトとSCSKの2社を紹介する。

※1:総務省「平成30年通信利用動向調査」(2019年5月)

日本マイクロソフト

日本マイクロソフトは、2007年の在宅勤務制度の導入以降、10年以上に渡り、働き方改革の取り組みを継続している。Office 365、TeamsやSurfaceなどの自社製品・ソリューションを活用しながら、最適な働き方をトライアンドエラーで模索し、現在のスタイルを作り上げてきた。

■最大のインパクトは固定電話の廃止
働き方改革を本格的に実践し始めた初期段階で、最もインパクトが大きかったのが、2011年2月に現在の品川オフィスへの移転を機に実施した固定電話の廃止だったという。「場所」の制約が一切なくなったため、テレワークやフリーアドレスの普及に大きく貢献した。現在はインターネット回線を使用し、Microsoft Teamsを通じてPCやスマートフォンに直接架電されるようにしている。

■テレワーク普及までの長い道のり
2007年から在宅勤務制度を導入していたが、当時活用する社員は多くなかった。転機となったのは、2011年3月の東日本大震災。1週間の出社停止となり、必然的に在宅勤務を行う状況になった。Office 365やSkype for Business(現在のMicrosoft Teams)を活用し、在宅勤務で業務や会議を遂行できたことで、従業員の中でテレワークを活用する機運が高まった。
ただ、その後すぐにテレワークが普及した訳ではない。2012年3月に「テレワークの日」を1日設け、全社員が出社せずに働く日とした。2013年はそれを3日に増やし、2014年からは「テレワーク週間」として賛同する複数企業とテレワークを実施した。
そして、2016年5月に就業規則を変更。「フレキシブルワーク」と称してテレワークの利用頻度・期間・場所の制限を撤廃し、利用申請も不要にした。現在では、社員のほぼ100%がテレワークを活用している。会議は「オンライン+Face-to-Face」もしくは「オンラインのみ」の2種類が中心で、オフィスへの出社を前提とした会議のセッティングは行わない。

■テレワークの永遠の課題とは
テレワークの制限がないため、利用頻度は個人のスタンスに起因する。難しいのは、マネージャがFace-to-Faceのコミュニケーションを好む場合、部下のスタンスとは関係なしに部下がオフィス勤務中心になることである。会社としては、個人と組織がポテンシャルを最大限発揮できることが重要であるため、テレワークを推奨する訳でもオフィス勤務を否定する訳でもない。個人の裁量に委ねられる部分は永遠の課題である。

■フリーアドレスの運用で見えてきたこと
フリーアドレスは、社員の約8割に適用している。業務上、専用デバイス/ソフトウェアを活用する必要性が高い部門は固定席となっている。
フリーアドレスを運用する目的は、コラボレーションの促進とコミュニケーションの活発化である。ただ、各自が効率的な働き方を模索する中で、荷物の出し入れが便利なロッカー近くの席が定番席になっていたり、在席確認がしやすいため部署で近くに集まったり、といった傾向が出てきている。フリーアドレスを運用する中で最適化してきた結果とはいえ、本来の目的から離れてきている。このような状況を一度リフレッシュさせるため、2020年実施のオフィスリノベーションを機にフリーアドレスの席を作り替える予定である。

■テレワークが普及する中でオフィスの意義は?
働く場所が多様化する中で、オフィスの存在意義、オフィスに出社する意味は何であろうか。同社では、(1)Face-to-Faceでコラボレーションするため、(2)集中して仕事するため、の2点を挙げ、それらを実現できるオフィス環境を整備している。
電話やテレビ会議で活用する「フォンブース」や3~4人で会議ができる「フォーカスルーム」、他にも「ミーティングルーム」や「ファミレスブース」などのスペースが設けられているが、全スペースに電話会議用のディスプレイとホワイトボードが用意されている点が共通している。設備条件に左右されず、人数や目的、気分に応じて自由にスペースを選択できるようになっている。
 品川本社の19階には、全社員に関係する設備が集められた「ワンマイクロソフトフロア」がある。社員食堂やヘルプデスク機能、社内イベント用セミナールーム、ピクニックエリアなどが設けられている。社員食堂の飲食スペースを仕事のデスクとして活用したり、ソファスペースで仮眠を取ったりと各自が自由に利用している。

■トライアンドエラーで最適化
日本マイクロソフトでは、働き方改革の取り組みを開始してから10年以上が経過した。様々な取り組みを実践して定着させてきた同社だが、トライアンドエラーの繰り返しを経て現在の制度や設備となっている。ただ、これが完成形ではなく、同社では今後も個人と組織のポテンシャルを最大限発揮できる環境づくりを継続する。そして、自社実践の経験や学びを顧客と共有し、同社の掲げる「ワークスタイルイノベーション」を推進していく(星裕樹)。

全文は以下よりご覧いただけます

https://www.yanoict.com/opinion/show/id/282

星 裕樹(ホシ ユウキ) 研究員
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