矢野経済研究所 ICT・金融ユニット

2018.04.11

【アナリストオピニオンのご紹介】キャッシュレス4.0~デジタル通貨の台頭によるキャッシュレス社会の進展~③

地域通貨型デジタル通貨の発行の可能性

では、地域社会が発行する地域通貨型のデジタル通貨の可能性はどうだろうか。地域通貨型のデジタル通貨に関しては、地域社会における合意形成の難しさや目的意識の不明瞭さから、一部のブランド力のある地域でのみ、発展していくとみている。ブランド力のある地域においては、デジタル通貨を発行し、地域の魅力と連動してデジタル通貨の価値を高めていくことができる。しかしながら、ブランド力を高めるための努力をせずに、目的意識を持たずにデジタル通貨を発行してしまうと、むしろ、地域のブランド力の低下が可視化されてしまうことになり、デジタル通貨発行の意味がなくなってしまう懸念がある。地域独自の強みを見つめなおし、デジタル通貨の発行に意義を見出せる地域のみが、デジタル通貨の発行メリットを享受できるであろう。

電子マネー型デジタル通貨は準フィアット型デジタル通貨に近づく

それでは、企業が発行するハウス型の電子マネーに近いデジタル通貨はどうであろうか。電子マネー型のデジタル通貨は、従来のプリペイド決済に近い位置づけになるため、特に目新しさは出てこないため、発行する必然性はないかもしれない。ただし、国をまたいで事業を展開している事業者にとっては、グローバルで一気通貫してオペレーションができるデジタル通貨の仕組みは魅力的である。電子マネー型デジタル通貨は結果として、準フィアット型のデジタル通貨への道を歩んでいくことになるであろう。

デジタル通貨へのシフトが鮮明になり、準フィアット型デジタル通貨が最も影響力を持つ世界へ

上述のように、キャッシュレス4.0の世界観では、金融面でもデジタライゼーションが進み、デジタル通貨の発行が相次ぐことが予想される。事実、グローバルレベルでICOを発行する企業が増加している。しかしながら、本当の意味でのデジタル通貨として機能するのはほんの一握りとなるだろう。

そして、グローバルで事業を展開するプラットフォーマーが発行もしくは管理をする準フィアット型デジタル通貨が影響力を持つようになる。グループ会社や取引先、そして顧客など関係するアクターのすべてが、デジタル通貨を保有することのメリットを感じるようになり、結果として、フィアット型デジタル通貨ではなく、準フィアット型デジタル通貨にシフトしていくことになるだろう。それに伴いデジタル通貨による決済が支払いの中心となり、真の意味でのキャッシュレス化が進む。

人口動態の予測等を鑑みると、2026年以降にデジタルネイティブ、スマートフォンネイティブの人口比率が高まることもあり、老若男女問わず、シームレスにデジタル通貨で支払いができる環境が整うであろう。

その際に、デジタル通貨のアグリゲーターに近い存在としてポジショニングできる事業者が、キャッシュレス決済の中心となるとみる。また、デジタル通貨のバックヤードを担う技術はブロックチェーンといわれているが、マイニングをだれがどのような形で担っていくかがイシューとなるため、ブロックチェーンの欠点を補った新たなアルゴリズムが採用されることになる。

2026年以降に本格化するキャッシュレス社会は、人類が経験したことのない未来であり、その未来の到来が待ち遠しくてならない。

(高野淳司)

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高野 淳司(タカノ ジュンジ) 主任研究員
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